厚生労働省は、厚生年金基金制度の見直し案をまとめた。代行制度は、改正法施行後10年間の移行期間をおいて、段階的に縮小・廃止するとし、基金の新規設立も認めないとした。来年の通常国会に提出し成立を目指す予定。
代行制度とは、本来は国が行う厚生年金の給付の一部を基金が代わりに給付することです。基金は「国に行くべき保険料の一部+企業負担分」を預り運用して利益を出すことで、加入員により多くの年金を給付することを目指していました。しかし、経済・金融情勢の低迷により、この代行部分の給付債務額(最低責任準備金)すら下回ってしまう「代行割れ」状態に陥る基金が増加している状況です(22年度末、全584基金中212基金/中小零企業が加入している総合型基金206基金)。これに加え、AIJ問題もあり、制度存続自体に意味がないと判断し、今回の廃止案が示されました。
基金が廃止されると、資金面に余裕がある基金の場合は代行部分を国に返上し他の企業年金制度に移行すること考えられます。一方、余裕のない基金の場合には代行部分を返上する資金がないので、本来ならば加入企業が解散時に一括して負担することになるのですが、現行の特例解散制度(分割納付)に一定の見直しを行うとしていますので、今後の動向に注目していく必要があります。
また、基金解散前に企業が自ら基金から脱退する「任意脱退」も考えられますが、この場合にも「特別掛金の一括納付」という高いハードルがあります。特別掛金とは、基金から給付する部分(上乗せ部分+代行部分)に対して、資金が不足していた場合にそれを償却するために脱退する企業が基金に対して支払う掛金の1つです。
いずれにしても、対策を考えるうえで、まず加入している基金がどのような財政状態にあるか、HPや基金だより等で公開している決算書を一度チェックしておきましょう。
特定社会保険労務士 中山 雅継